輪界のスターたちの競演は、今年も西武園競輪場を舞台に行われる。昨年は脇本雄太が5連勝の完全Vを遂げた6日間シリーズ。「第66回オールスター競輪(G1)が、8月15日にナイター開催で幕を開ける。年に一度のファン投票による夢のバトルが、真夏の夜をさらに熱くする。
強力近畿勢がシリーズの中心だ
脇本雄太選手
昨年末のグランプリを制して22年の最優秀選手にも輝いた脇本が、3年ぶり3度目のファン投票1位に選ばれた。グランプリVから年が明けて23年は和歌山、豊橋で記念を連続の完全優勝。“無双状態”が続いていたが、2月の奈良記念は腰痛により途中欠場を余儀なくされた。復帰場所となった2月全日本選抜では優勝こそならなかったが決勝に進出して、ファンを安どさせた。その後も4月武雄記念V、5月日本選手権、6月高松宮記念杯と今年のG1はすべて優出。高松宮記念杯では4連勝で勝ち上がり、決勝では地元の古性優作の連覇に貢献する先行策でさすがの力を見せた。一昨年の東京五輪後は、常に持病の腰痛との闘いにもなっているが、昨年完全Vを遂げた相性のいい西武園バンクなら、オールスター連覇に視界は良好だろう。ファン投票1位の期待に応えるシーンは十分だ。すでに2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯と今年2度にわたりタイトルを獲得している古性は、ともに脇本の番手からチャンスをモノにしている。3月ウィナーズカップの決勝では、古性が脇本の前を回り、近畿の新たな連係も披露した。古性自身もいつでも脇本らを連れてラインの先頭で戦う準備はできているだけに、古性、脇本の並びがオールスターでも見られるかもしれない。この2人に稲川翔、東口善朋、三谷竜生、そして寺崎浩平とそろった近畿勢は、他地区にとってはあまりにも強力だ。
結束力固い北日本勢が脅威
新山響平選手
この近畿勢に対抗できるのは、新山響平、新田祐大、佐藤慎太郎、守澤太志と4人のS級S班を擁する北日本勢。新S班として今年のはじめは試行錯誤を重ねた新山が、3月ウィナーズカップの優出をキッカケにひとまわり成長して別線に脅威を与えている。6月の高松宮記念杯まで優勝こそないが、突っ張り先行を主体とした積極策でラインのリードオフマンを務めている。6月25日の現在、獲得賞金3位でグランプリ出場をほぼ手中に収めていると言っていい佐藤は、46歳にして衰えを感じるどころかまだまだ進化している。5月の日本選手権の落車の怪我は、時間が解決してくれると信じたい守澤。さらに新山とのタッグで、新田にはチャンスが大きく広がっている。S班4人の結束が、決勝で見られると北日本勢に流れは大きく傾く。
エース平原康多が仕上げる
平原康多選手
41歳になった平原康多は、今年も地元の期待を背負い6日間シリーズの奮闘を誓う。4月武雄記念で落車に見舞われ、1カ月半以上ぶりに復帰した高松宮記念杯。しかしながら、その高松宮記念杯でも落車を喫して、途中欠場を余儀なくされた。まだ、地元の大一番までには日にちがあり、それまでには仕上げてくると思うが、やはり若手が関東の浮沈のポイントにはなりそうだ。吉田拓矢、眞杉匠、坂井洋らと息を合わせて、ラインの力で別線を撃破することこそ平原にとっての本望だろう。
戦力がそろってきた中四国勢
犬伏湧也選手
中四国勢は、S級S班の松浦悠士を中心に、ビッグ制覇に手が届くところまできた犬伏湧也、徐々にその躍動感が戻ってきた清水裕友らが織りなすラインの相乗効果が生まれると台頭があっていい。3月のウィナーズカップを獲った松浦は、単騎でも優勝を逆算できる緻密な走りができるのが大きなセールスポイント。しかしながら、近畿や北日本らとの力関係を考慮すれば、犬伏のパワーは大きな戦力だ。まだまだ粗削りな犬伏だけに、高いレベルで連係を結実させられるかは未知のところもある。その精度を上げていけば、松浦、そして清水にもチャンスは生まれる。
好調選手がVを狙う
郡司浩平選手
5月の日本選手権での落車以来の実戦となった高松宮記念杯で、郡司浩平は3勝をマークして優出。決勝では松井宏佑と共倒れになったが、実力者の深谷知広をはじめ、松井、渡邉雄太、北井佑季ら郡司の前を走れる機動タイプがそろっているのは強みだ。復帰の高松宮記念杯でも上々の動きを見せていた郡司が侮れない。また、5月の日本選手権では、単騎で初戴冠を成し遂げた山口拳矢の勝負強さにはそそられる。中部勢として孤軍奮闘してきた感のある浅井康太とのタッグも魅力で、“持ってる”山口からは目が離せない。九州勢は山田英明、庸平兄弟、荒井崇博らもいるが、同地区からの信頼が厚い嘉永泰斗は初タイトルを手にできるだけの力はつけていて、九州のファンもG1制覇を熱望していることだろう。